次の日、夕方から雨の予報だったので俺は一応、傘を持っていく。制服を濡らすとまた母親が煩い。

 昨日の別れ際のやりとりがどうも気まずく感じたが、言われたとおり神社に行くと、ユイはいつもの調子で俺を見つけて、手を振ってきた。

 翔人と連絡を取り合って、今日は彼の家の近くのコンビニで待ち合わせている。神社に散歩に来るだけあって商店街からそう遠くはなかった。

 縁が見えているので迷うことはない。むしろこのまま家まで行くのも可能だが、最初から住所を知っているなど怖すぎる。

 ユイは昨日の話に特段触れはせず、俺たちは他愛ない話をしつつコンビニに向かった。

 指定されたコンビニに着くと翔人はもう来ていて雑誌コーナーで漫画を立ち読みしていた。店内に入ると自動ドアの開いた音で翔人はこちらに視線を寄越す。

「ちわ」

「おう。なんかわざわざ悪いな」

「いいっすよ。ほかの家族は誰もいませんから」

 短くやり取りをかわすと、なにも買わずにコンビニを出た。一応、手土産は持参してきている。この前、父親が上司からもらったという隣県の銘菓だ。

 横流しで申し訳ないが、手ぶらよりはマシだろう。こういうことはちゃんとしろと母親には言われてきた。

 たった数分なのに、自動ドアが開いた瞬間、もわっとした空気に包まれて不快だった。一瞬だけ顔をしかめて歩き出す。

「今日はアンは連れてないのか?」

「家に置いてきました。多分、ドア開けたらすごい勢いで寄ってきますけど、すみません」

 その言葉に心躍らせているのは翔人と反対側に俺の隣を歩いているユイだった。どんなに寄ってきても触れない事実は変わりないだろうに。