会場の外を見渡したが、関係者以外はほとんど帰って辺りは閑散としている。梅雨は明け、空は澄み渡った青色だった。
なにかを諦めきれず、しつこくも俺は建物に沿って並んだ木の間を走っていく。しばらくすると、あるうしろ姿が目に入った。
「ユイ!」
それはもう、ほぼ直感だった。車椅子に乗った女性は肩をびくりと震わせる。サイドの髪をうしろで軽く結って、下ろしている髪は肩よりも下で長かった。
その髪がさらりと揺れて彼女がこちらを向いた。その瞬間、俺は息を呑む。
「ユイ」
信じられないという面持ちで見つめる俺に対し、目の前の彼女は泣きそうな顔で微笑んだ。俺はゆっくり彼女に歩み寄っていく。
「久しぶりだね、シュウくん」
その声は俺がよく知っているものより、幾分か落ち着き払っていた。けれど確実に懐かしさを伴うもので耳慣れた声と口調に胸が熱くなる。
「戻ってきちゃった。シュウくんのアルブレヒトが見たくて」
「本当にユイなのか?」
彼女は静かに頷いた。
「二年間、昏睡状態で、さらに目覚めてから二年だもん。……ずっと連絡できなくてごめんね」
俺はかぶりを振る。目の前のユイは記憶の中よりも、ずっと大人っぽくて綺麗だった。セーラー服ではなく半袖のブラウスに紺色のロングスカートを身に纏っている。
真っ青な空に、高さのあるふわふわとした白い雲。ずっとぐずついた天気の中で過ごしてきた俺たちにとって、こんな空の下にいること自体が不思議だった。
なにかを諦めきれず、しつこくも俺は建物に沿って並んだ木の間を走っていく。しばらくすると、あるうしろ姿が目に入った。
「ユイ!」
それはもう、ほぼ直感だった。車椅子に乗った女性は肩をびくりと震わせる。サイドの髪をうしろで軽く結って、下ろしている髪は肩よりも下で長かった。
その髪がさらりと揺れて彼女がこちらを向いた。その瞬間、俺は息を呑む。
「ユイ」
信じられないという面持ちで見つめる俺に対し、目の前の彼女は泣きそうな顔で微笑んだ。俺はゆっくり彼女に歩み寄っていく。
「久しぶりだね、シュウくん」
その声は俺がよく知っているものより、幾分か落ち着き払っていた。けれど確実に懐かしさを伴うもので耳慣れた声と口調に胸が熱くなる。
「戻ってきちゃった。シュウくんのアルブレヒトが見たくて」
「本当にユイなのか?」
彼女は静かに頷いた。
「二年間、昏睡状態で、さらに目覚めてから二年だもん。……ずっと連絡できなくてごめんね」
俺はかぶりを振る。目の前のユイは記憶の中よりも、ずっと大人っぽくて綺麗だった。セーラー服ではなく半袖のブラウスに紺色のロングスカートを身に纏っている。
真っ青な空に、高さのあるふわふわとした白い雲。ずっとぐずついた天気の中で過ごしてきた俺たちにとって、こんな空の下にいること自体が不思議だった。