「ひどい怪我だったから。目が覚めたって、ものすごくリハビリが必要だよ。痛みだって伴うし、後遺症だって残っているかもしれない。そうなったら、おじいちゃん、おばあちゃんにまた迷惑をかけちゃう。どうせ学校にも行ってないし、友達だっていない。だったら、このままの方がよっぽどいい! ずっとひとりでもかまわない!」

 こんなふうに感情を露わにするユイは初めて見た。大声を出して肩を震わせた後で、ユイはがくりと項垂れる。

「そんなこと、ないだろ」

 そして俺が問いかけると、ユイはびくりと体を揺らした。

「ひとりでもかまわないなら、なんで俺と一緒にいたんだよ。あんなに嬉しそうだったじゃんか」

 『あれは嘘だったのか』というのはさすがに声にしなかった。一瞬、辺りが静まり返り、遠くの虫の声だけがやけに耳につく。

「本当、矛盾してるよね」

 そして、ユイからぽつりと呟かれた声は、消え入りそうで聞き逃してしまいそうだった。

「ひとりでもかまわなかったのに。あんなに人と関わるのが怖くて嫌になったのに。それなのに、気づいて欲しくて、話がしたくて。そばにいてくれる人を願っちゃった」

 ユイはゆっくりと顔を上げてこちらを見ると、無理矢理笑顔を作った。その姿が徐々に薄くなっているのに気づき俺は慌てる。けれどユイの表情だけはっきりと見える。痛々しい笑顔だ。

「どうやってシュウくんに私の力が移ったのかは分からない。でも、私が願わなければ。……自分は縁を見えたせいで、嫌な思いをあんなにしてきたのに、シュウくんを同じようにしちゃって。偉そうなことをいっぱい言ったけど、私が一番自分から逃げてた。信じられなかった」

 そこで一息ついたユイから次に続けられた言葉に俺は愕然とする。