ユイは悲しそうに微笑んだ。

「おじいちゃん、おばあちゃんのそばにいても私はなにもできないし、つらいだけだから」

「体に戻るとか……目を覚ますことはできないのか?」

 おそるおそる尋ねる。もし、それができるのだとしたら……。しかし期待を打ち砕くかのごとくユイは首を横に振る。

「分からない。どっちにしても私は目を覚ましたくない」

 ユイはきっぱりと答えた。あまりにも揺るぎない言い方に俺は自分の耳を疑う。まっすぐにユイを見つめると、ユイは気まずそうに視線を下に向けた。

「体に戻るくらいなら、私はずっとこのままでいい。いつも新月になって力が弱まって眠るときに思うの。『次に目が覚めたときは、お父さん、お母さんのいるところかな。もしくはやっぱりこのままの状態なのかな』って。少なくとも病院のベッドで目を覚ますのだけは想像もできないし、願ってもいない」

「どうしてだよ!」

 正直、ユイの言っている意味が理解できない。それならこの状況は、ユイが望んだものなのか?

「ユイ、言ったじゃないか。『歩いて、走ってみたい』って。『自分の足に地をつけてみたい』って」

「無理なの!」

 今度はユイが声を荒げた。涙は見えないが、その表情は泣いているかのようだった。

「私、歩けないかもしれないの」

 雷に打たれたような衝撃が走った。改めて透けているユイの足に視線を送る。