「にしても今日、神社にやってきた彼、なにかを願っている感じでもなかったよね。シュウくんはどう思う?」

 自分の発言のせいで人を落ち込ませてといて、まったく気にする素振りを見せずに、ユイはベッドの上から話を変えてきた。

「そりゃ、俺らがいたから参拝しづらかったんじゃねーの?」

「正確にはシュウくんだけ、ね。でも私、どこかで会ったことがある気がするんだよね」

「前にも来たことがあるのか?」

「うーん、どうだっけ?」

 首を傾げるユイはなんとも頼りない。神様がこんなのでいいのか。しかし、俺には彼が参拝しに来たのかどうかさえ謎に思えた。どちらかと言えば嫌々やってきたような……。

「ま、あれこれ考えてもしょうがないね。とにかく、また神社に来てよ。縁を見たらなにか分かるかも!」

 話をまとめようとするユイに、俺は思わず頷きそうになるのをすんでのところで止めた。

「行かないって言ってるだろ!」

 強く言うと、ユイは大袈裟に肩をすくめてる。

「シュウくんは強情だなぁ。分かったよ。ギブアンドテイクってやつでしょ? もし手伝ってくれて、私に能力が戻ったら、シュウくんの縁を叶える手伝いをしてあげる」

 その言葉に俺は目を丸くした。ユイは口角をにんまりと上げる。

「ほかの人の縁を見えても、自分の縁を見るのはできないの。だから今のシュウくんに自分の縁はどうすることもできないけれど、私に能力が戻ったら、見えるどころか直接縁に触れちゃうし」

 どう?とさらにこちらを見てくるユイに、俺はあらゆる思いを巡らせる。

「分かったよ、手伝えばいいんだろ!」

「やったー! シュウくんありがとう」

 両手を上げて、ぴょんぴょんとユイは足がないのにベッドの上下に浮いて跳ねた。実際にやったら下に響いて大変だろうが、その心配は皆無だ。

 どうして俺がこんな目に合わないとならないのかと肩を落とす。それでも今は勉強以外に、このぽっかり空いた胸の穴をなにかで埋めたい、そんな気持ちもあった。