『神社に行かないと』という気持ちがあるのに、体が言うことをきかない。悩んだ挙句、母親に電話して学校に迎えにきてもらった。

 その足でいつもお世話になっている内科に行くと『季節の変わり目ですし、風邪でしょう』とあっさりとした診断がくだされる。

 とりあえず熱が下がらないことにはどうしようもない。

 帰宅して重い足取りで自室に向かい、パジャマ兼部屋着に着替えベッドに横になる。天井を見つめると、くるくると回っている感じがした。

 余程、熱が高いらしい。それから部屋をぐるっと見渡す。当たり前だがこの部屋にいるのは俺ひとりだ。

「会いに、来いよ」

 苦々しく呟いた。いつもはこちらの都合などおかまいなしにやってくるくせに。一方的に言い放ち、ユイに背中を向けたのを今更ながらに後悔した。

 今もユイはあの神社でひとりでいるんだろうか。俺と出会う前も、ずっとひとりだったんだろうか。

 もしかして、このまま別れるなんて……ないよな?

 堪らなくなって体を起こしたが高い熱と目眩で、すぐに体を横たわらせる。

 俺はどうして、いつもタイミングが悪いんだ。判断を間違ってばかりで、バレエのコンクール前だって足を怪我して。……情けない。

 感傷的になり涙が滲みそうになる。けれどすぐさまその考えを頭から振り払った。

 しっかりしろ。どんなに後悔したって過去は変えられない。あれが俺の実力だったんだ。でも今は違う。まだ諦めるのは、後悔するのは早すぎる。

 正直、どうすればいいのか分からない。ユイになにを言えばいいのか答えも出ていない。そけれど、やっぱりなかったことにはできない。

 明日、絶対にユイに会いに行こう。

 薬が効いてきたのか、眠気もやってくる。息苦しさを感じつつ俺は静かに瞼を閉じた。