もう嫌だ。もうなにもかもが嫌だ。胸にじわじわと痛みを伴った正体不明の感情が覆っていく。

　なんでこんなに苦しまないといけないんだよ。なんでこんなにも腹が立つんだ。ユイとは最初から別れることが決まっていたのに、最初から住む世界が違っていたのに。

　分かっていたはずだ。

　それなのに、いつのまにか自分の中でユイの存在が大きくなっていて、隣にいるのが当たり前になって。目の前の迫る別れに対して、受け入れることも、抗うこともできない。

『それよりもシュウくんと一緒にいる時間を大切にしたい』

　そう言ったユイの望みすら叶えてやれそうもない。ユイと会っても、終わりばかりを考えてしまう。上手く取り繕えない。

　別れを回避するのが不可避だからってもうちょっとやりようがあるだろ！　自分がなにもできないからってユイに感情ををぶつけて、責めて。そうじゃないんだよ。

　ユイを傷つけて、自分も同じくらい傷つくのに。こうやって傷つけ合うくらいなら、一緒にいない方がいいんだ。

　なんで、なんでなんだよ。もう忘れてしまいたい。なにもかも、なかったことにしたい。こんなにつらいのに、どうして出会ったのか。そもそも俺たちの出会いに意味はあったのか。意味を求めること自体が間違っているのか。

　波立って揺れ動く感情と思考が収まらず、結局俺は新月が明後日に迫っているにも関わらず、事実から目を背けるようにして、神社に行くことはできなかった。