リビングに通され、一番に目に入ったのは油絵だった、壁に大きく飾られた絵画を思わずじっと見てしまう。
「それは亡くなった妻が趣味で描いたんだよ」
うしろから声がかかって俺は慌てて振り向いた。湯のみふたつと和菓子がいくつか乗せられているお盆を抱えた鹿山さんが、俺と同じく絵画に目をやる。慈しむような優しい表情だった。
「すいません、お気遣いなく」
「こちらこそ、なにも面白くない家だけど、よく来てくれたね」
ま、適当に座って、と言われ俺は絵から一番近い下座に腰を下ろした。鹿山さんは定位置らしい奥に腰を下ろす。
「それで、斎藤くんのことが知りたいんだって?」
『斎藤』というのがすぐに誰なのか繋がらなかったが、しばらくして月白神社の神主さんの苗字だと気づいた。
「彼とは高等学校のときの友人でね。お互いに結婚してからも交流があったんだけど、娘さん夫婦があんなことになったときは、さすがにショックだったよ。私も葬儀には参列したんだが……」
鹿山さんは目を細めて思い出を語りはじめる。俺は湯のみを握りしめ、しばらくその話に耳を傾けた。そして、話が一区切りついたところで俺は一番気になっていることを、思いきって尋ねる。
「あの、斎藤さんのお孫さんは……」
「あれ? もしかして君はお孫さんと知り合いだったのかな?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど」
目を丸くした鹿山さんに、俺は目線を逸らして答えた。鹿山さんは自分のひげを触りながら、またなにかを思い出すかのように目線を遠くにやる。
「それは亡くなった妻が趣味で描いたんだよ」
うしろから声がかかって俺は慌てて振り向いた。湯のみふたつと和菓子がいくつか乗せられているお盆を抱えた鹿山さんが、俺と同じく絵画に目をやる。慈しむような優しい表情だった。
「すいません、お気遣いなく」
「こちらこそ、なにも面白くない家だけど、よく来てくれたね」
ま、適当に座って、と言われ俺は絵から一番近い下座に腰を下ろした。鹿山さんは定位置らしい奥に腰を下ろす。
「それで、斎藤くんのことが知りたいんだって?」
『斎藤』というのがすぐに誰なのか繋がらなかったが、しばらくして月白神社の神主さんの苗字だと気づいた。
「彼とは高等学校のときの友人でね。お互いに結婚してからも交流があったんだけど、娘さん夫婦があんなことになったときは、さすがにショックだったよ。私も葬儀には参列したんだが……」
鹿山さんは目を細めて思い出を語りはじめる。俺は湯のみを握りしめ、しばらくその話に耳を傾けた。そして、話が一区切りついたところで俺は一番気になっていることを、思いきって尋ねる。
「あの、斎藤さんのお孫さんは……」
「あれ? もしかして君はお孫さんと知り合いだったのかな?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど」
目を丸くした鹿山さんに、俺は目線を逸らして答えた。鹿山さんは自分のひげを触りながら、またなにかを思い出すかのように目線を遠くにやる。