善は急げと翌日の放課後、俺は教えてもらった住所を頼りに、章吾のじいちゃんの家を訪れている。

 急な話だとは思ったが、ばあちゃんは亡くなっているらしく『一人で寂しく暇してるから話し相手にでもなってやってくれ』とのことだ。そういう事情もあって章吾もちょくちょく立ち寄っているそうだ。

 神社の近くなのでユイを連れて行くかどうか迷ったが、結局声をかけなかった。ユイは俺があれこれ神社について探るのを嫌がっていたし、なんとなく止められそうな気もしたから。

 一緒にいられる時間は限られているのにこの行動が正しいのか、そうでないのか俺には判断できない。でも正しいか正しくないかなんて、そのときにはきっと誰にも分からない。

 なら自分の思うところを進むしかない。それに『章吾のじいちゃんから神社の話を聞いておけ』と自分の中のなにかが告げている。この直感を今は信じよう。

 一応、章吾から連絡してもらっているとはいえ、俺は緊張していた。家にあったまっさらのお菓子を手土産に【鹿山】と記された表札を確認して呼び鈴を鳴らす。

 すると、すぐに中から返事があり、年配の男性がドアを開けて出てきた。章吾と一緒で背が高く、あごひげがふさふさとしていて、安っぽいたとえだがどこかの社長のような気品を感じた。

「突然、無理を言ってしまってすみません」

 俺は名前を告げて頭を下げる。すると章吾のじいちゃん、鹿山さんは笑顔で俺を迎え入れてくれた。

 家は年季は入っている感じだが、ひとりで住むのには立派すぎる気がした。昔の造りだからか玄関も段差があり、お年寄りにはきつい印象だ。