「ユイはさ、こうやって参拝者の縁の手助けをする前のことを、あまり覚えてないって言っただろ。実はちょっと気になる話を聞いたんだ」

 そして俺は田島から聞いた神社に関する話や、神主夫妻の状況について手短に説明した。ユイがなにかを思い出すのではないかと願いながら。

 ところが、ユイは表情ひとつ変えずに話を聞いていた。

「話は分かったけど、そのお孫さんがどうしたの?」

「もしかしてその孫がユイって可能性はないのか?」

 まどっろこしいのは抜きに俺は結論を急ぐ。こっちが怖いくらい真剣な顔で詰め寄ったのに、ユイは困ったように笑った。

「いきなりなにを言い出すのかと思えば……すごい仮説だね、シュウくん」

「他人事みたいに言うなよ。自分のことだろ!」

 つい強い口調になってしまい慌ててボリュームダウンする。どうしてか、ユイはいつも自分に関しては興味がなさそうだった。

「どうだろう? でも仮に、その孫娘さんが私だとしても、どうすることもできないし」

 『どうすることもできない』ユイはいつもの口調だったが、その言葉がやけに冷たく感じて俺の胸に刺さる。俺のしていることが無駄だと言われた気がしてしまった。

 なにかを返さなくては、と思ったそのとき、耳に当てていたスマホが震えた。どうやら待ち合わせ相手がついたらしい。