「もし、俺にできることがあったら力になるから」

「言ったな!」

 その言葉を待っていました、と言わんばかりの森野の勢いに俺は一瞬で圧された。

「え?」

 見れば森野と田島は顔を見合わせて頷きあっている。いったい、なんなんだよ。

「早速だけど、お前にしかできないことがあるから力を貸してくれ」

「どうしたんだよ?」

 驚きを隠せない俺に田島が笑った。

「文化祭のステージでの出し物を、もう募集してるだろ? あれでダンスやろうと思って。今、いろいろと流行って、動画とかもアップされてるし。でも俺ら、授業以外でダンス経験ないし、お前に指揮を執ってもらおうと思ってさ」

「はぁ?」

 さっきまでの感動が吹っ飛び、俺は声をあげた。しかし田島も森野もものともしない。

「よし、決まりな。ほかにも何人か誘ってるから。力になってくれるんだろ?」

 森野に痛むほどの力で両肩をばしばしと叩かれる。どうやら俺に拒否権はないらしい。

 神社に関して調べてくれたのもあり、負い目を感じているのか。いや、それでも本当に嫌なら断るればいい。無視したって。少なくとも今まではそうしてきた。けれど――。

「しょうがねぇなぁ」

 俺は大袈裟にため息をついて答えた。すると田島と森野は満面の笑みを浮かべたので、それ以上はなにも言わないことにする。

 バレエではなくとも、音楽に合わせて体を動かすのは好きだし。それに、俺がバレエではないにしろ、踊っているのを見たらユイは驚くかもしれない。その考えに至って胸が痛んだ。叶えることはできるんだろうか。

 縁の件を含めて、俺がしなくてはならないことは、まだまだあるんだ。