「それがさー。神主夫妻は事故で亡くした娘夫婦の孫を親代わりに育てていたらしいんだけど、なんの因果か、その孫も二年前に事故にあったんだって」

「神様に仕えているのに、そんな不幸ごとが続くなんてつらいよなー」

 そんな感想を漏らしたのは森野だった。俺はなにも言えない。もしかして、という気持ちがどんどん大きくなって、それに比例するかのごとく脈拍も速くなっていく。

「じゃぁ、俺の聞いた話」

 俺の思考を遮るタイミングで今度は森野が話しだす。

「つっても、俺は妹から聞いただけだから、陸みたいにたいした情報じゃないかもしんねぇけど。あの神社が縁結びで流行るようになったのは一年半前くらいかららしい。妹の友達の知り合いが、あそこの神社でたまたまお参りに行ったらすぐに彼氏ができた、とかで」

「友達の知り合い、典型的な女子の噂話だな」

 田島の冷静なツッコミに森野は「うっせーよ」と眉間に皺を寄せた。

「まぁ、そんな感じで陸の話だと、随分前からある神社なのに、縁結びとかで流行ったのはここ最近のことみたいだぜ」

「そうか」

「で、これでお前の悩みは解決しそうか?」

 ずばり、と森野に切り込まれ俺は返答に迷った。

「……分かんねぇけど。でも、お前らの情報はすごく助かった。ありがとう」

 今までは照れくさかったりもしたが、あっさりと俺はお礼が言えた。本当に俺の個人的な事情でここまでしてくれたのが純粋に嬉しくて、有難かった。