一限の数学は当たらなかったから適当にやりすごした。昨日、ユイと話していろいろと考え事をしていたから寝不足気味だ。頭がぼうっとするのに時間は刻々と迫っている。

 憲明と章吾の縁についてはもちろん、もう次の新月まであと一週間だ。休み時間、俺は仮眠をとろうと重たい頭を机に突っ伏す。すると近くに人が寄ってくる気配を感じた。

「例の神社についてちょっと調べたぞ」

 いきなり眠気を吹き飛ばす発言が降ってきて、反射的に顔を上げる。そこには田島と森野の姿があった。

「マジか」

「マジだって。実は俺、こうやって調べるの意外と好きなんだよね」

「陸って昔からそういうの好きだよな。俺には理解できねぇけど」

 森野の呆れた顔とは対照的に、田島は得意げな顔をしている。手には情報をまとめたと思われるメモを持ってた。俺は急いで聞く体勢を整える。

「月白神社っていうのは、あくまでも地域の人が地名をつけて呼んでいるうちに定着したもので、正式には白山(しらやま)神社の分社になるらしい。日本書紀に出てくる菊理姫(くくりひめ)って神様を(まつ)っているそうだ」

 白山神社というのは俺も聞き覚えがあった。ここからは少し離れているが、観光ブックにも載るくらい大きくて有名な神社だ。

 行ったことはないが神社の規模もそこそこ大きく、知名度もあって初詣とかはすごい人だというのは聞いたことがある。

 説明する田島に対し、口を挟んだのは森野だ。