病院の先生の口振りや予約を入れたのを考えると、憲明の言うとおり本当にバレエは関係なく、学校で怪我をしたからあの日に治療に来たのだろう。

 学校も違うし、章吾のせいで憲明が怪我をしたとは考えにくい。だとすると……。

「あれ?」

 自分の考えを必死でまとめていると、やはり、なにかがおかしい気がする。ここまで出掛かっているのに、それがはっきりとしない。

「どうしたの、シュウくん?」

 ユイが不思議そうなにこちらを見てくる。その顔を俺もじっと見つめた。

「なぁユイ。人はどんなときに嘘をつくと思う?」

「え、なに急に?」

 突拍子もない質問にユイが怪訝な顔をした。それでも俺があまりにも真剣だったからか、目を泳がせつつもユイが必死で考えを巡らせているのが伝わってくる。

「どんなとき、というか。理由はいろいろあるだろうけど、人が嘘をつくのは基本的に自分のためじゃないの?」

「そう、だよな」

 どういう答えを期待しているのか。歯切れ悪く答えると、ユイは「あとは」と続けた。

「誰かのために、とか。嘘も方便って言うし。でも、それが本当に相手のためになるのか分からないから、結局はやっぱり自分のためなのかもしれないけど」

 その答えを聞いて、おぼろげな違和感が形を成していき、その正体が分かった気がした。嘘をついた理由など本人しか知らない。だからこそ、確かめる必要がある。

 この土日のどちらかで、あいつに会って話を聞こうと俺は決めた。