「たとえば……バレエを辞めようとしている原因が憲明くんにある、とか?」

 自信なさそうに告げたユイの発言に俺は眉を寄せた。たしかに憲明の能力は秀でていたが、章吾はコンクールにも興味がなく、出場するつもりもないようだし、憲明に対してバレエを辞めるほどのなにかがあるとも思えない。

 プライベートでなにかあったとかなら、もうまったく見当もつかないが、そんな感じでもなさそうだし。

「なんなんだろーな」

 俺は頭を抱えた。再びベッドに体を投げ出したくなる。

「なら、逆に考えてみようよ。シュウくんの見える縁が一本なんだとすれば、憲明くんもまた、章吾くんに対してなにか思うところがあるんだよね?」

「そうだよな。でもあいつは神社で祈ったのも怪我のことだって言ってたし。縁も怪我した足に結ばれていて……」

 そこでユイはなにかに気づいたといわんばかりに、顔を上げて身を乗り出してきた。

「もしかして、章吾くんのせいで憲明くんが怪我をしちゃったとか? 憲明くんは章吾くんをかばって言わなかったけれど、それで章吾くんが負い目を感じちゃって、バレエを辞めるって言い出したのかも」

 これしかない!という勢いのユイだが、それはおかしい。

「ちょっと待てよ。憲明は神社で会った日に、学校で怪我をしたんだぞ? あの日はバレエのレッスンもなかったし、それこそふたりで会ってなにかあったなら、神社に来る時間にタイムラグがありすぎだろ」