ドタドタと廊下を誰かが走ってくる音が聞こえる。
窓から見える桜の花ぴらが流れる様子をスマホのカメラで撮っていた私は、足音うるせーなと密かに思っていた。
『ルームA』の扉がガラっと開いて、みんな振り向くと、この春に卒業したばかりの武原さんがゼーゼー言いながらドアの前にいる。
「どうしたんすか?」
二年生の男の子は新部長。
三年生は私しかいなし、無理と辞退したから彼になったというわけだ。
ジャケットにノーネクタイで少し丈の短いパンツをオシャレに着ている武原さんは業界人な雰囲気が出てきている。
「うちの『半夏雨』が以前出した制汗剤の広告募集で優秀賞を取った。大賞ではないが、これはすごいことだ‼業界中が注目している」
それを聞いて、みんなワーっと盛り上がる。
これをキッカケで『半夏雨』に色んな企業からも仕事が入ってくるかもしれないから。
「誰のだろー?」「どんなやつか見れますかー?」
などなど、武原さんにみんなが寄っている。