「紹介しよう。彼が、綾乃の婚約者だ」

 獅子倉氏が、連れの男性をふたりに紹介した。

「はじめまして。一条敬太郎と申します」

 ベージュのスーツ姿の男性が、頭を下げた。

綾乃よりは幾分か年上に見えるから、二十代後半といったところか。栗色のマッシュショートの、いかにも育ちのよさそうな男だ。

「はじめまして。パーティーの演出を担当しました、桐ケ谷ルイと申します。こちらは八神良太君です」

「はじめまして、八神です」

 良太がぎこちなく笑えば、敬太郎は人好きのする笑顔を見せた。笑うと大黒様のように目尻が下がり、温厚な性格が窺える。

 重要な来客があったのだろう。相沢が耳打ちしてくると、「すまない、ちょっと抜けるよ」と獅子倉氏が敬太郎の隣を離れた。

ルイが、すかさず流暢に場を繋ぐ。