お辞儀をするルイに続いて、良太も慌てて頭を下げた。

「アール・ヌーヴォーの曲線美を、見事に表現したテーブルセッティングだな」

「獅子倉様のお持ちになられている食器の美しさが引き立つよう、考案いたしました」

「うむ。特にテーブルフラワーのチョイスが気に入った。あれはなんという名前の花なのかね?」

「丹頂アリウムでございます。茎が美しく折れ曲がる花ですので、アール・ヌーヴォーの曲線美が、さらに際立つと考えました。和と洋の美しさが混在しているこのお屋敷にもよくお似合いです」

 アール・ヌーヴォーとは二十世紀初冬にヨーロッパで流行した芸術様式で、曲線美に重きをおいた趣向だと、良太はさきほどルイに教えてもらった。

 全てのテーブルには、白いテーブルクロスが掛けられ、レース編みのテーブルセンターの上には、丹頂アリウムをあしらった小さなテーブルフラワーが飾られている。 

その横には、三段のケーキスタンドが置かれ、上段からスコーン、色とりどりのケーキ、正方形のサンドウィッチの順に乗せられていた。

下方に据えられたガラス製のジャムボットには、スコーン用のジャムが二種類入っている。

各テーブルの軽食とは別に、入り口近くの丸いサイドテーブルにも、コンポティエ(脚つき皿)に乗ったクッキーやチョコレート、それからフルーツポンチにミニタルトが並べられていた。

もう一つのテーブルには茶葉が入った缶やホットウォータージャグなどが用意されている。

場内全体がほぼ純白で統一されているのは、いずれ祝いの場になることを見越した演出に違いない。