二時間ちょっとで、ティーカップ選びとパーティー会場の下見は終わった。

あとはルイが独自にプランを詰めていくらしい。

 帰りは、獅子倉氏と綾乃が、ルイと良太を玄関先まで見送ってくれた。背後には、ひっそりと相沢が控えている。

 黒塗りのベンツの前で、ルイと獅子倉氏が固い握手を交わした。

「ではあとは任せたぞ、ルイ君。君も当日は招待客として楽しみたまえ。桐ケ谷君も呼びたいところだが、彼はまだ戻って来てはいないんだろ?」

「はい、元気にしてはいるようなのですが」

「息子に店を任せきりとは、彼も困ったものだな。気苦労はあるだろうが、頑張りたまえ。そういえば、良太君だったかな?」

「は、はい」

 急に話を振られ、良太はシャキンと背筋を伸ばす。

「良かったら、君も来たまえ」

「ありがとうございます……!」

 藪から棒に、パーティーに招待されてしまった。ぎくしゃく礼をすれば、頭を上げた拍子に、獅子倉氏の一歩後ろにいる綾乃が目に入る。

 綾乃はまるで聖母のように、うっすらと純真な笑みを浮かべていた。

 ――そういえばこの人、今日ほとんど喋ってないな。

 もともと口数が少ないのだろう。清楚で控えめな、まさに大和撫子といった雰囲気の女性だ。正直言ってタイプである。

 こんな人と結婚できる婚約者さんは、幸せだな。心の中で虚しくひとりごちながら、良太はルイとともに車に乗り込んだ。