唐突にドアが開かれた。
入って来たのは、ラベンダー色のスプリングコートを着た上品そうな中年女性だ。
指の根もとでいくつも光る、煌びやかな宝石のあしらわれた指輪。コートと同色の、エレガントなつば広帽子。
「こんばんは」
「いらっしゃいませ、清河様」
少々お待ちください、とルイは良太に小声で告げると、中年女性の方へと歩み、コートと帽子を受け取る。
「今日は、どうされましたか?」
「週末にね、内輪でパーティーを開こうと思っているの。そのとき使うテーブルクロスをあなたにご相談したくて。あら、先客かしら? 予約していなかったし、また出直しましょうか?」