「病院経営者の息子か……」

 ばっちりアイメイクの施された目に、じりじりと炎が燃えている。

 良太をロックオンしたまま、色っぽく微笑む沙也加。 

身の危険を感じて、良太は一歩後ずさった。

「……頼りないし美しくもないけど、家柄は合格ね」

「沙也加さん、心の声が全部漏れてます」

「……競争相手もいなさそうだし、こっちに乗り換えるのもありかも。尻に敷けそうだし」

「だから、聞こえてますって……」

 ――ルイさん、絶対わざと言った!

 睨みつけても、ルイは涼しい顔でナプキンワークを続けている。

見かけに反して、案外腹黒い人なのかもしれない。

冷や汗を掻きながら沙也加をちらりと見れば、見たこともないほど極上の笑みが視界に飛び込んできた。

その瞳は獲物を見つけた豹そのもので、良太は声にならない悲鳴をあげたのだった。