「そうやって、さくらはいつだって一生懸命俺を守ってくれた。でも俺は守られてばかりで、全然男らしくないだろ? 少しでもさくらによく見られるよう、大学も就職先も頑張ったけど、こんなんじゃいつかさくらに捨てられるんじゃないかって、いつも焦ってた」

 さくらは目を瞬く。

直樹がそんなことを考えていたなんて、思ってもいなかった。

さくらにとっては、もったいなさすぎる彼氏なのに。

「さくらが食空間演出講座に通うって言いだしたとき、急になんでだろ?って思った。そして、通っている店の店長がすごくイケメンって聞いたとき、不安になったんだ。俺に愛想をつかして、その人のこと好きになったんじゃないかって、悪い方にばかりかんがえちゃってさ」

自嘲するように、直樹が笑う。

「わざとらしい理由つけて行ったのも、様子を見るためだよ。そしたらびっくりするくらいのイケメンで、ますます心配になった。だから、相談に乗るよって言ってくれた沙也加さんと、思わずLINEを交換したんだ」

「そうだったんだ……」

「でも、理由はどうであれ、他の女の人とLINEを交換してさくらを不安にさせたことは謝るよ。最低だよな、俺」

「ううん」

 さくらは、ゆるゆるとかぶりを振った。

 自分のよさを、彼はずっと知ってくれていた。それなのに、さくらは自分を卑下して、直樹が好きになってくれた自分のいいところに目を向けようとはしなかった。

 自分で自分を好きになれなかったさくらこそ、最低だ。