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 四月終わり、ゴールデンウィークを間近に控えた祝日の夕方。

京成中山駅近くにある自宅に、さくらは直樹を呼んでいた。

さくらと直樹は、ともに生まれも育ちも船橋だった。千葉出身の人間は、実家を離れひとりで暮らすようになっても、京成線または総武線沿いを選ぶことが多い。

もっとも馬喰町駅付近に住んでいる直樹に比べると、さくらのアパートの家賃は比べ物にならないほど安いけれど。

「さくらの家、久しぶりだな」

「そうだね。最近、会うのはいつも外だったもんね」

 直樹はここのところ仕事が忙しいらしく、どこかの駅で落ち合うことが多かった。

おざなりに置かれていた直樹のスマホに沙也加からのLINEが届いたのを見てしまったのも、駅近のイタリアンで直樹がトイレに行っている間の出来事だ。

――本当に、仕事が忙しかったのかな。

疲れているのかか顔色の冴えない直樹を見ていると、さくらはまたしても良からぬ不安に駆られてしまう。

「うお、何これ」

 リビング兼ベッドルームのドアを開けた途端、直樹が驚きの声を上げた。

 冬はこたつとしても使えるダイニングテーブルは、不要になったけれど捨てるのももったいないという理由で、既婚者の姉が実家に置き去りにしていたものだった。

タダだから貰ったものの、ひとり暮らしにはそぐわないサイズ感に後悔していたところが、今宵ばかりは役に立った。