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閉店間際の『ボヌール・ドゥ・マンジェ』では、カウンター後ろで、ルイがしろたんと見つめ合っている最中だった。
「ギュウ―」
うなりを上げているしろたんは、ケージ越しにルイを威嚇している。
片手にトイレ処理用のスコップを持っているところから察するに、ルイのねらいは、おそらくゲージ内に転がっている糞の処理だろう。けれども、しろたんにはそれを許す兆しがなかった。
どういうわけか、しろたんはルイに懐いていない。ルイは前々からしろたんの世話にほとほと手を焼いており、それゆえしろたんに好かれている良太が雇われたのだろうと考えている。
「こんばんは」
「良太君、待っていましたよ」
良太に気づくなり、ルイが美麗な笑顔を見せる。心なしかホッとしたように感じるのは、気のせいではないだろう。
「すみません。今日はバイトの入りが遅かったので、来るのも遅くなっちゃいました」
「大丈夫ですよ。お店は十時で閉めますが、十二時頃までは私は店内にいますので」