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金曜日。

アルバイトを終えた良太は、JR船橋駅と京成船橋駅を結ぶ連絡通路を歩んでいた。

「八時十三分の上野行き、乗れそうだな」

 最近は、アルバイトが終わってからルイの店に行きしろたんの世話をするのが日課になっていた。

アルバイトのない日は朝から行って、雑用やケージの掃除に専念している。

 途中、チョコクロワッサンの美味しいベーカリーカフェが目に入った。

お土産に買って行ったら、ルイさん喜ぶだろうか。でも寄り道したら、八時十三分には乗れないな。

そんなことを思いながら良太が何気にガラス張りの店内に視線を走らせれば、思わぬ人を見つけた。

「あ……れ?」

まるでガラス越しに間抜けな声が聞こえたみたいに、相手も顔を上げる。

グレーのスカートスーツ姿で窓際の席に座り、山盛りにされたチョコクロワッサンの一つを頬張っていたのは、先日会ったばかりのさくらだった。


「こんなところを見られて、お恥ずかしい限りです……」

 ざっと見た限りでも十個はあるチョコクロワッサンの前で、さくらはもじもじと俯いた。マカロンタワーならぬ、チョコクロタワーだ。尋常な食欲ではないから、多分やけ食いのようなものだろう。

「僕も、ちょうどチョコクロワッサン食べて帰ろうと思っていたところだったんです。なんか同席しちゃってすみません」