ルイを初めて見る人は、ほとんど同じ反応をする。

日常に突如現れたタキシード姿の美男には、男女問わず見惚れる魅力があるのだ。

その後も、沙也加に絡まれている直樹の隣で、さくらはほぼ無言で過ごしていた。

といっても、彼氏が現れる前からほとんど喋ってはいなかったので、そのことに気づいた人はいないようだ。

けれども、根っからのお人よし気質が災いして、良太は俯いてばかりのさくらが気になって仕方がなかった。

――さくらさん、講座が楽しくないのかな。

食空間演出に興味を持って申し込んだはいいものの、周りはイケメン目当ての女性ばかりで、がっかりしているのかもしれない。

それに、髪や洋服ばかりに気を使っている他の受講者とは、気が合わないのだろう。やめたいと思っている可能性だってある。

だとしたら、とても残念だ。

ルイの食空間演出の素晴らしさを、良太は既に知っているから。

週が明けアルバイトの日々が始まっても、良太はそのことが引っ掛かって、落ち着かない気持ちになっていた。