目の前に立っていたのは、漆黒のタキシードを完璧に着こなした、見たこともない美丈夫だった。

透き通るようなきれいな肌に、アーモンド形のダークグレーの瞳。細面にはスッと鼻梁が走り、計算しつくされたかのような絶妙なバランスで、薄めの唇が上品な笑みを浮かべている。

顎下までの黒髪アンニュイヘアー、整い過ぎた顔立ちに釣り合う絶妙な長身、非の打ちどころのないスタイル。

こんな人間がこの世に存在するのかと、良太は驚いた。ここまで美しいと、男としての嫉妬を通り越して、ただただ感心してしまう。

「随分、しろたんが懐いていますね」
「へ? しろたん、ですか……?」
「その子の名前です」
「あ、この子、しろたんって言うんすね……」

話の流れから察するに、どうやらこのもふもふは彼のペットのようだ。タキシードイケメンともふもふの大ネズミ。奇妙な組み合わせである。

タキシードイケメンは涼やかに目を細めた。

「少し、お時間ございますか?」
「時間ですか? 家に帰るだけなんで、暇っていえば暇ですが……」
「よろしければ、お礼にご馳走させてください。すぐそこですので」