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老人ホームに外出届けを出し、良太が祖母を連れ出したのは、青空に霞がかった雲が揺蕩う四月半ばのことだった。

ルイのレストランに行こうと言うと、祖母はひどく喜んだ。ルイのことを、すっかり気に入っているらしい。

 店へと続く急勾配の階段を目にしたとき、祖母は不安げな表情を顔に浮かべたが、ルイが介助役を買って出れば、途端に上機嫌になった。

良太も手伝おうとしたが、「ルイさんの方が背が高くて安心だから、もう大丈夫よ」と、さりげなくあしらわれた。

175センチある良太も低身長なわけではないが、さらに10センチは高いルイに守られる方が、たしかに安心だろう。とはいえ、おばあちゃん子の良太としては少し面白くない。

「まあ、素敵なお店ね」

 階段を降りた先に広がるエレガントな内装を見るなり、祖母はため息を吐くように呟いた。

 中世ヨーロッパ風の装いの店内には、四人掛けのテーブルが四つに、八人掛けの長テーブルがひとつある。

八人掛けのテーブルは主に講座に使われており、向かいの壁際には、数々の名食器やカトラリー、燭台やテーブルクロスを収納した棚が備えつけられていた。

その隣には、柱を挟んで茶色いロココ調のカウンターがあった。両サイドにテーブルスタンドの置かれたそこは、会計などを担う場所のようだ。

ちなみに背後にある棚の臙脂色のカーテンの向こうには、しろたんのゲージが置かれている。