だから、帰りの電車の中で、ルイが放ったセリフに良太は凍りついた。
「おばあさまの、食事プランのテーマを決めました。オリエント急行の食堂車での食事を再現しましょう」
さっそく、ルイは胸もとから取り出したダークブラウンの革の手帳に、何やら書き込みはじめている。
どうやら、先ほど写真で見た六十年前の食堂車の様子をメモしているようだ。
「待って、ルイさん。それはダメだ……!」
良太は、慌てて声を張った。
「そんなことをしたら、ばあちゃんがじいちゃんを思い出してしまう。ばあちゃんとじいちゃんは、すごく仲悪かったんです」