ルイは良太の戸惑いを、軽く頷いて肯定した。そして椅子から立ち上がると、カウンター向こうのカーテンを開ける。

ゲージの中では、しろたんが回し車をカラカラと走っている最中だった。先日聞いた話によると、しろたんはチンチラという動物の女の子らしい。

 ひくひくっと鼻を動かし、しろたんが良太の方に顔を向ける。

「キュウ―、キュウ―」

「おや、甘えているようです。あなたの匂いを感じとったみたいですね」

 良太も立ち上がり、ゲージへと手を伸ばした。

「おーい。しろたん、元気だったか?」

ゲージの隙間から指を差し入れると、しろたんが甘えるようにすり寄ってくる。かわいさのあまり、ついつい口もとがにやけてしまう。

「かわいいな~。連れて帰りたいな~」

デレていると、ふと視線を感じた。横を見れば、ルイがじっとりと良太を見ている。顔が整い過ぎているだけあって、真顔で見つめられると少々怖い。

「……私にはたいして懐かないのに、妬けますね」

「そうですか……?」

 良太より遥かにモテるであろうルイにそんなことを言われるのは、皮肉にしか聞こえない。

「しろたんは、店長から預かっている大事な方なので、救ってくださったあなたには本当に感謝しているのです。私で力になれるなら、いつでも気軽にお申し付けください」

「ありがとうございます……って、えっ?」

 何気ないルイの言葉に、良太は軽く瞠目する。

「ルイさんは、このお店の店長じゃないんですか?」

「いいえ。店長が留守の間の仮の店長といったところでしょうか」

「そうだったんですね……」

「店長には、程遠い性分ですので」

 ゆるく微笑んで、ルイが謙遜した。