ルイと知り合って、そろそろ三ヶ月が経とうとしている。
一週間ほど前から本格的に梅雨入りしていたけれど、今日は久々の晴れ間が空に広がっていた。
カーキ色のリュックを背負って、蝶番の軋む音とともにアパートのドアを開ける。
家賃三万、風呂なし、トイレなしの蔦が絡まるボロアパートの階段を降りれば、アスファルトの道路に虹ができていた。
階段下の赤いポストを確認する。
「あ、来てる」
届いていたのは、料理学校のパンフレットだった。
数日前インターネットで資料請求したものが、もう届いたらしい。
コック帽を被り、目を輝かせている女の子の写真を一瞥してから、良太はパンフレットをリュックにしまった。
帰ってから、ゆっくり見るつもりだ。
通りに出て、すっかり視界に馴染んだ街並みを歩きだす。
途中、長閑な日本の街並みに突如にょっきり突き出た茶色い洋館を振り仰いだ。
今日のバイトは五時までだ。
終わったら、いつものように『ボヌール・ドゥ・マンジェ』に直行しよう。
そんなことを思いながら踏切を渡ると、良太は京成線の線路を横目に見ながら、青空の下を勢いよく駆けだした。
Fin.