料理の修業はあきらめ、ウェイターとして店で働きながら落ち込む日々を過ごしているうちに、突如桐ケ谷がいなくなった。

 自分にできることは何か必死に模索して、あがいてあがいて、どうにか店を切り盛りしてきた。

けれども、本当はずっと待っていたのだ。

ルイの埋められない穴を埋めてくれる人間を。

理想の卵焼きを作ってくれる、料理人を。

ずっとずっと、線路わきのあの店で、一人待っていたのだ――。