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 ある日突然、唯一の肉親である母親がいなくなった。

 困ったと思うことはあった。

けれども、深くは考えないようにしていた。

 当面の生活費は置いて行ってくれている。

コンビニでカップラーメンを買って、飢えをしのげば済む話だ。

 当時小学三年生だったルイの異変に気づいたのは、担任の教師だった。

 親のサインが必要な提出プリントを、ことごとくルイが出し忘れていたからだ。

学校の月謝も、滞っていた。

もう三ヶ月も母親が家に帰っていないことを告げると、教師は憐みの目でルイを見た。

――ネグレスト。

 聞き慣れない単語が、たびたび耳をかすめた。

 母親は見つからず、ルイは児童養護施設に入れられることになった。