「でも……」

 ルイが、何かを言いかけた。

しばらく間を置いたあとで、ルイはようやく次の言葉を口にした。

「――君の作る卵焼きは、美味しかったです」

ルイの顔が、みるみる赤くなっていく。

ルイのそんな姿を目にするのは初めてのことで、良太はそわそわと落ち着かない気持ちになった。

伝染するように、良太の顔にも熱がこもっていく。

今更のように、褒められたことに対する喜びが胸に広がっていた。   

ルイに、こんな人間らしい一面があったなんて。

なぜか喜んでいる自分に、良太は気づいた。

胸の奥からにじみ出るようなぬくもりが、体中をぽかぽかと温めていく。 

「……また、作ってきます」

長い沈黙が訪れた。

「…………お願いいたします」

赤らんだ顔を隠すように、良太とは反対の方向を見ながらルイが答えたのは、大分経ってからのことだった。