すると、背中から消え入るような声が良太に投げかけられる。

「……が、……苦手なのです」
「……はい?」

 よく聞こえず、良太は後ろを振り返った。
テーブルに肘をつき、手の甲に顎を乗せながらうつむいているルイが、視界に入る。

「……私は、料理が苦手なのです」

 今度ははっきりと聞き取れた。

 思い詰めたような、ただならぬ気配が、ルイを取り巻いている。