美味しかった?と問いたいが、美味しくないのは祖母の顔を見れば明らかだ。

幼い頃から幾度も祖母と交わした食事の話題は、すっかり禁句となってしまった。

『良ちゃん、このお饅頭すごく美味しいのよ。食べてみて』

過去の祖母の笑顔が脳裏を過り、胸が締め付けられる。あの笑顔を見ることは、もう二度とないのだろうか。

「そういえば……」

――料理の『美味しい』を決める、全てを請け負っています。

数日前、ひょんなことから、近所にあるニッチな店を訪れた。

自分には一生縁のない店だと思っていたけれど、ひょっとすると。

もしかしたら、あの謎めいた男なら……。