テーブルの一角に腰かけたルイの姿だ。ルイが店内で座っている姿を、良太はほとんど見たことがない。

時間帯と“CLOSED”の札から察するに、昼休憩なのだろう。

「良太君……?」

ルイの顔が、珍しく狼狽えている。

「ルイさん、こんにちは! 今日バイトなかったんで、早めに来ました。ご飯中ですか?」

 いつも自信に溢れているこの人も、このような表情をするんだと、良太は妙なところで感心していた。

何気なくルイのテーブルの上に目をやった良太は、ペットボトルやビニールに入った三角のおにぎりが置かれているのに気づいた。

お惣菜のきんぴらごぼうは、パックが開封されている。

「………」

 おそらく、これがルイの昼食なのだろう。

 ペットボトルは、良太も大好きな“ブランチの紅茶”。とあるコンビニのオリジナルブランドだ。おそらく、これら全てをまとめてコンビニで買ったのだろう。

「ルイさんって、意外と庶民派の食事なんすね。日頃から、もっとすごいもの食べてるのかと思ってた」

それこそ、この店の内装に合うエレガントな食事だとか、良太が食べたこともないような高級フランス料理だとか。

そんな食事でないと、その類まれなる美貌は維持できないのではと勝手に想像していた。

「なんか、一人暮らしの男ってかんじ」

「一人暮らしの男でございます」

 静かに説き伏せられ、良太ははっと目を覚ます。そうだった。その美しさゆえすっかり忘れていたけれど、彼はまぎれもなく二十五歳独身一人暮らし男性なのだ。

「そういえばそうでしたね。食事中に急に来てすみません……!」

 ルイから漂う、このいつになく凍り付いたようなオーラは何なのだろう。

良太はまるで機織り中の鶴を覗き見てしまったような、やってはいけないことをしてしまった気分になる。

 とにかくルイの姿が眼中に入らないところに行かなければと、良太はカウンター後ろのしろたんゲージに移動した。水を変えて、牧草の餌を入れてあげよう。