きんぴらごぼう、ほうれん草のおひたし、鮭の塩焼き、ポテトサラダ。
四つに仕切られた上段には、日本の代表的なおかずが詰まっていた。
続いて、二段、三段と陽菜が重箱を解体していく。
二段目には、筑前煮と、ぎっしり詰まった甘い卵焼き。
そして三段目には、塩加減が絶妙な俵型のおにぎりが綺麗に並んでいる。
重箱に入れるお弁当を作って欲しいとルイから言われたときは一瞬戸惑ったものの、ルイが指定したおかずはどれも良太が繰り返し作ったことがあるものばかりだったので、楽しく用意できた。
「これ、ルイさんが作ったの?」
目を輝かせながら、陽菜が問う。
「いいえ、良太君です」
「嘘!? 八神君、こんなに料理上手だったの? すごいじゃない!」
今度は、由美が驚きの声を出す。
「ねえねえ、ママ。食べようよ」
「どうぞ、食べてください」
「ん! あまくておいしい~」
真っ先に卵焼き頬張った陽菜が、もぐもぐしながら顔をとろけさせた。
見ているこちらまでもが、卵焼きを味わっている気分になるような表情だ。
「きんぴらも、美味しいわ」
「おむすびも、ふんわりだよ~」
良太の作ったお弁当を中心に、陽菜と由美の会話が弾んでいく。
自分の作った料理を美味しそうに人が食べる姿を見るのは、不思議な感覚だ。
足がしっかり地についていることを実感し、自分の存在をはっきりと認識できる。