いつもの配達人、そしていつもの早乙女食器店からの修繕依頼だった。
いつもと違うのは、やたら箱が大きい点だ。長さ一メートルは超えている長方形の段ボールが二箱もあり、とてもではないが一人では運び込めそうにない。
早乙女食器店は、いったい何を送り付けてきたのだろう。
良太の困惑を察知したのか、配達人が目深に被ったキャップから瞳を覗かせた。
「よかったら、お手伝いしましょうか?」
「ありがとうございます……!」
それぞれ箱を一つずつ抱え、思った以上の重さにふうふう言いながら、厨房を通り抜ける。
配達人に、箱をカウンター前に置くようにお願いする。さすが手慣れているだけあり、息が上がっている良太に対し、彼は息切れひとつしていない。
ガリガリガリガリ……!
足もとから突如聞こえた音に、良太は慌てて飛びのいた。見れば、しろたんが自慢の鋭い歯をむき出して、段ボールの下方をかじっている。
「え? しろたん?」
「……ご、ごめんなさい!」
良太の真横にいた陽菜が、狼狽えている。うっかり、しろたんを抱いていた腕を離してしまったようだ。
良太は優しくしろたんを胸に抱えると、「はい」と陽菜に差し出した。
「ごめんなさい、しろたんを落としてしまって……」
陽菜は、青ざめたまま狼狽えている。
「心配しないで。ここの絨毯、弾力があるから。それに、しょっちゅうルイさんの腕から跳んで逃げ出してるから、着地も上手なんだ」
良太がそう言うと、納得したのか陽菜は黙って頷いた。
配達人は、良太が陽菜とやり取りをしているうちに帰ってしまったようだ。
「ルイさん、これ、何なんですか? 壺ですか? こんなのも修理するんですね」
額の汗をぬぐいながら、良太がルイを振り返る。
ルイは凛と背筋を伸ばして、じっとこちらを見ていた。
腕を組み、何かを考えあぐねているような顔をしている。
「ルイさん……?」
良太が遠慮がちに彼を呼べば、ダークグレイの人形目(ドールアイ)が意味深に微笑んだ。そして良太に近づくと、陽菜に聞こえないよう耳もとでささやく。
「――分かりました」
「何がですか? 箱の中身がですか?」
「いいえ。由美様が、相談されていたことの答えがです。やはり、完全に治ったわけではないようですね」
唐突なルイの返答に、良太は「えっ!」としゃっくりのような声を出した。
いつもと違うのは、やたら箱が大きい点だ。長さ一メートルは超えている長方形の段ボールが二箱もあり、とてもではないが一人では運び込めそうにない。
早乙女食器店は、いったい何を送り付けてきたのだろう。
良太の困惑を察知したのか、配達人が目深に被ったキャップから瞳を覗かせた。
「よかったら、お手伝いしましょうか?」
「ありがとうございます……!」
それぞれ箱を一つずつ抱え、思った以上の重さにふうふう言いながら、厨房を通り抜ける。
配達人に、箱をカウンター前に置くようにお願いする。さすが手慣れているだけあり、息が上がっている良太に対し、彼は息切れひとつしていない。
ガリガリガリガリ……!
足もとから突如聞こえた音に、良太は慌てて飛びのいた。見れば、しろたんが自慢の鋭い歯をむき出して、段ボールの下方をかじっている。
「え? しろたん?」
「……ご、ごめんなさい!」
良太の真横にいた陽菜が、狼狽えている。うっかり、しろたんを抱いていた腕を離してしまったようだ。
良太は優しくしろたんを胸に抱えると、「はい」と陽菜に差し出した。
「ごめんなさい、しろたんを落としてしまって……」
陽菜は、青ざめたまま狼狽えている。
「心配しないで。ここの絨毯、弾力があるから。それに、しょっちゅうルイさんの腕から跳んで逃げ出してるから、着地も上手なんだ」
良太がそう言うと、納得したのか陽菜は黙って頷いた。
配達人は、良太が陽菜とやり取りをしているうちに帰ってしまったようだ。
「ルイさん、これ、何なんですか? 壺ですか? こんなのも修理するんですね」
額の汗をぬぐいながら、良太がルイを振り返る。
ルイは凛と背筋を伸ばして、じっとこちらを見ていた。
腕を組み、何かを考えあぐねているような顔をしている。
「ルイさん……?」
良太が遠慮がちに彼を呼べば、ダークグレイの人形目(ドールアイ)が意味深に微笑んだ。そして良太に近づくと、陽菜に聞こえないよう耳もとでささやく。
「――分かりました」
「何がですか? 箱の中身がですか?」
「いいえ。由美様が、相談されていたことの答えがです。やはり、完全に治ったわけではないようですね」
唐突なルイの返答に、良太は「えっ!」としゃっくりのような声を出した。