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翌日から、学童保育後、ルイは陽菜を学校まで迎えに行くようになった。
それから連れ立って『ボヌール・ドゥ・マンジェ』に行き、陽菜は由美が迎えに来るまでしろたんとともに過ごすことが日課となった。
のちに良太が由美に聞いた話によると、突如現れたタキシード姿のイケメンに、学童保育は一時騒然となったらしい。
それからルイが陽菜を迎えに行く時間には、無意味に女性教員や女性保護者が学校周辺に集まるようになったという。
結果として大人の目が行き届き、地域の治安はすこぶるよくなったというから、イケメンの力は底知れない。
雨の日々が続き、六月になってようやく止んだ。梅雨ももうすぐそこまで迫っているはずなので、晴天を過ごせるのもわずかだろう。
その日良太がバイト帰りに『ボヌール・ドゥ・マンジェ』に寄ると、陽菜が店の隅で謎の踊りを踊っていた。
「い~や~サッサッ! ねえ、ルイさんも一緒に踊ろうよ!」
「いえ。私は遠慮しておきます」
数日にして、人見知りの少女はどこへやら、陽菜は店にもルイにもすっかりなじんでいた。
「あ、りょーた!」
ちなみに、良太だけはなぜか呼び捨てだ。
「陽菜ちゃん、何踊ってるの?」
「沖縄の踊り! 運動会で三年生が踊るの!」
「へえ」
なぜに千葉で沖縄?と思ったものの、本人か楽しそうなのでまあいいかと思う。
「ていうか、運動会っていつ? 十月じゃないの?」
「陽菜の学校は五月だよ。本当は先週の土曜日だったけど、雨で延期になって今週の土曜日になったの」
「私が通っていた小学校も、五月でしたよ」
キャビネットから取り出した皿を、一枚一枚丁寧に拭いてメンテナンスしていたルイが言葉を挟む。
「ふうん。そういうものなんですね」