「え?」

 さりげないルイの言葉に、良太は不意打ちで驚かされた。

プライベート過ぎてそれ以上は聞くのをためらうけれど、この流れで聞かないのもおかしい気がする。

「……ルイさんって、桐ケ谷さんの養子なんですか?」

「はい。私がこの家に来たのは、十歳の頃になります」

 良太は、これまで感じていた違和感の理由を理解した。

 例えば、父親を苗字で呼ぶところ。

 例えば、突然店と苦手なペットを押し付けていなくなった父親を、全く責めようとしないところ。

 ルイが語る桐ケ谷氏は、近いようで遠い存在だった。

遠慮しているというより、弟子が師匠を崇拝するような距離感に似ている。ふたりが血の通った親子でないのなら、自ずと納得がいった。

「この重箱には、私がこの家に来て間もなくの頃の、大事な思い出が詰まっているのですよ」