白いもふもふネズミを助け、タキシードの美丈夫に“ブランチの紅茶”と上野のパンダクッキーをご馳走になってから数日後。

バイトが休みの良太は、最寄り駅から京成線に乗り、隣駅に向かった。目指すは、駅から徒歩十分の場所にある老人ホームだ。

 個室のドアをトントンと叩けば、中から「どうぞ」という柔らかい声が返ってくる。

 六畳程度の部屋は、真っ白なシーツの掛かったリクライニングベッドが、部屋の半分近くを占めていた。

木製のテレビボードに、居心地のよさそうなベージュのソファー。

完全には開けない仕組みになっている窓からは、午後のあたたかな日差しが降り注ぎ、フローリングの床に木漏れ日を作っている。

 祖母は、ベッドに腰かけ編み物をしている最中だった。

ボルドーのワンピースに白いカーディガンという、いつものスタイルだ。以前はもっとふくよかな人だったが、年々小さくなっている気がする。

混じりけのない白髪は一つの三つ編みにまとめ、背中に下ろされていた。