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裏口のインターホンが鳴った。
いつもの配達人から小包を受け取れば、珍しく早乙女洋食器店以外からの届け物だった。
「ああ、どうやら直ったようですね」
ルイが上機嫌な口調で段ボールを開ければ、クッション材の中から、三段重ねの漆の重箱が姿を現す。
「重箱ですか?」
「はい。小さな傷ができてしまっていたので、修繕に出していたんですよ」
ルイがカウンターに置いたそれを、良太はしげしげと眺める。シャンデリアのシルエットが映り込むほどの、見事な光沢を放つ朱色の漆だった。
「このお店、和食器も置いてるんですね」
「数は少ないですが、和食器もひと通り揃っています。和食の食空間演出も行っていますし、洋食を和食器でいただく演出を提案することもありますので」
洋食器しか見当たらないので、知らなかった。
きっと、普段はチェストの奥か倉庫にしまいこんでいるのだろう。
「ですが、これはお店のものではなく桐ケ谷の私物です」
ルイが、重箱の蓋部分に指先で触れながら言った。
「随分と古いものなのですが、最近は風合いが出てきてよりいっそう美しくなってきているようですね」