同い年のルイと相沢は、一年ほど同じ児童養護施で育った。ともに、生まれ育った境遇に恵まれなかったことが理由だった。

実の両親に傷つけられ、自らの存在価値を見出せずにいたふたりは、交わす言葉は多くなくとも、自然と意識し合うようになっていく。

　十歳の頃、ふたりはそれぞれ新たな家に引き取られた。

　ルイは、フランス料理店を営む桐ケ谷薫のもとへ。

　楓は、世界に名だたる紡績会社を率いる獅子倉雄三のもとへ。

　養子として迎え入れられたルイに対し、楓は違った。獅子倉氏の目的は、彼の隠居生活を支える理想の使用人を育てることだった。

桐ケ谷氏と獅子倉氏が繋がり、ルイと楓が偶然の再会を果たしたのは、今から五年前――二十歳の頃だ。

「家令が、すっかり板についてきたな」

「お前ほどじゃない」

　昔と変わらず、ふたりの会話は弾まない。それでも、新たな人生を与えてくれた桐ケ谷氏に深い恩を抱き、心から尊敬しているルイには、楓の気持ちは自分のことのように分かるのだった。

　楓は、獅子倉氏のことを骨の髄まで大事に思っているのだろう。

それこそ、自分の命を差し出しても構わないほどに。