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少人数でのアフターヌーンティーパーティーは、終盤に差し掛かろうとしていた。
相沢は終始きびきびと動き、給仕に徹している。
配膳ワゴンを押した彼の背中がドア向こうに消えたところで、ルイはティーカップを置き席を立った。
「これは私が持って行きますので。少しお休みになられてください」
傍らにいた使用人女性から、汚れた皿を積んだトレーを受け取る。
たちまち頬を赤くした彼女に目で微笑みかけると、ルイはトレーを片手にテラスルームを離れた。
厨房では、相沢がワゴンに積んだ皿を流しに置いているところだった。ここで軽く汚れを流し、食洗機に移すのだろう。
「相変わらず女泣かせな男だな」
ルイが背後から囁けば、相沢は手を止め振り返った。
無機質で冷たい瞳が、ルイを真っ向から見据える。
「お前には言われたくない」
相沢楓――ルイにとっては、この世で唯一の砕けた口調で話せる相手だ。