すっかり日の落ちた踏切わきに佇む茶色い洋館を振り返り、確認してから歩き出す。非日常な出来事だったので、幻だったのではないかと不安になったからだ。

百メートルほど先にあるボロアパートに戻ってから、良太はようやく気づいた。

日常とはかけ離れた世界に突如迷い込んで、ここ数年沈んでばかりいた気持ちが、少しだけ昂っていることに。