二重扉を鍵で開け、窓のないコレクションルームへと足を進める。
先頭を行く獅子倉氏がパチリと電気をつければ、四方を食器棚に囲まれた空間が姿を現した。
「………!」
獅子倉氏は、すぐにそれに目を止めた。
「どうして……」
良太も、一瞬呼吸を止める。
食器棚の中ほど、ガラス戸の向こうに、以前と変わらず葡萄葉模様のマイセンカップが飾ってあったからだ。
輝くような白磁も、緑色の葉模様も、金で鳥を模した取っても、以前と何ひとつ変わりがない。
ここから持ち出され、割れたはずのものが、まるで何事もなかったかのように元通りになっている。まるで奇術を見ているかのようだ。
「なぜ……? たしかに持ち出したのに……」