ゲストがいなくなり、閑散としたテラスルームに綾乃はいた。
しょぼくれながら窓辺の席に腰かけている敬太郎を気遣うように、隣に寄り添っている。
敬太郎ではなく、まるで綾乃がティーカップを割ったかのような、沈痛な面持ちだ。
「綾乃様」
ルイが近くに寄れば、綾乃は淑やかに会釈をした。
「ティーカップをすり替えたのは、あなたですね」
綾乃の涼やかな目もとが一瞬で凍り付くのを、良太は見逃さなかった。
「―――え?」
声を漏らしたのは、綾乃ではなく敬太郎だった。
そんな敬太郎にちらりとだけ視線を投げかけ、綾乃はすぐに下を向いた。
固く引き結ばれた唇が、微かに震えている。
「なんだと!? 綾乃、本当か!?」