「獅子倉様に、気づかれたくなかったのでしょう。本来用意していたカップと、大事なマイセンカップをすり替えたことに」
ノックの音が、応接室に響いた。
「お待たせいたしました」
相沢がドアを開ければ、エプロン姿の三人の女性が、ぞろぞろと中に入ってくる。
四十代程度の女性がふたりに、おそらく二十代そこそこの女性がひとり。
誰しもが神妙な顔をしているのは、自分があらぬ疑いをかけられているのかもと、不安に駆られているからだろう。
ルイと向かい合うように彼女たちが規律すると、扉を閉めた相沢が、監視するように扉わきに控える。
「相沢様も含め、お聞きいたします。この中に、綾乃様と敬太郎様のお席を変えた方は、いらっしゃいますか?」
三人の女性は、怯えるように俯き、答えようとはしない。もちろん、相沢もだ。
「先に言っておきます。私にはティーカップをすり替えた方の目星が、すでについています」
ルイの言葉に、良太は驚いた。
「え? そうなんですか?」