犯人は、私の隣でわくわくと張り切っている彼女だ。
あかりに、柊斗のことを好きなんでしょ、という話をされてから、私は柊斗と話す時少しだけ緊張するようになってしまった。
全く目が合わせられないとか、過度にドキドキして話ができないとかではないから、柊斗も含め、その周りにいるあかりや悠真くんにも気付かれていないと思うけれど。
ほんの僅かに柊斗のことを意識してしまう瞬間が増えたのだ。
でもやっぱり、これが恋なのかと言われれば自分では断定できない。だからはっきりと自分の気持ちが整理できる日がくるまでは、自分の中に少しだけこの感情を置いておくことに決めた。
「じゃあ、花火の開始時間までとりあえず屋台に行く?それとも、どこか座れそうな場所探す?」
一旦ここから動いた方が得策だと思ったのか、悠真くんが声をかけると、あかりがすぐに手を挙げて意見を出してくれた。
「この人混みの中立ち見はきついし、四人が座れそうなところ探さない?その後、屋台に食べ物を買いに行く組と、座る場所で待機する組に分かれる。そして花火までご飯を食べたりして、花火が終わった後はみんなで射的とかしに行こうよ。今よりは空いてると思うし」
その提案に、全員が納得し大きく頷く。
こうして私たちはまず始めに花火を鑑賞する場所探しを開始した。
駐輪場を出て人混みを避けながら歩くこと五分。
「お、あそこ空いてない?」
悠真くんがまだ誰も座っていないアスファルトの一角が空いているのを見つけた。急いで近付いてみると、ちょうど四人が横に並んで座れそうなスペースだ。
ここに残って場所を守る人と屋台へ買い物に行く人を決めるために、私たちは拳を突き出しジャンケンをする。その結果、あかりと悠真くんが二人同時に負けたため、この場所で待機してくれることに決定した。
「じゃあ、俺らは早速屋台に行こうか」
「うん、そうだね。とりあえず頼まれたものを順番に買って行こうか」
そう言いながら、私と柊斗は互いに頷きあう。
「凪、いちご飴とたこ焼きは頼んだからね」
「柊斗、俺はフライドポテトな。あと俺もたこ焼き食べたい。でも、特にポテトは絶対だからな。買ってこいよ」
楽しそうに食べたいものをつらつらと述べるあかりと悠真くんの欲しいものを買いそびれないようにしっかりとスマホにメモし、私と柊斗は人で賑わう屋台に足を向けた。